モバイル通信を利用して、外出先でインターネットを利用して調べ物をしたり、メールのやり取りをする、そんな60代のご夫婦のお話です。
3年前に仕事をリタイアし、現在の趣味は温泉めぐり。一見するとインターネットとは縁が薄い趣味であり、勤めていた会社はIT関係というわけでもなく、ましてやインターネットを始めたのは自分の時間がとれるようになった定年後から。しかし、そんなご夫婦の生活が、インターネットに出会うことで一転したのです。
ご夫婦がインターネットを始めたきっかけは、半年ほど前に娘さんご夫婦に子供が生まれたこと。二人にとっては初孫。これは大事件です。しかし、遠方のためお孫さんと会えるのも年に数回。せっかく会えたときに人見知りされては寂しいので、インターネットを使ってビデオレターをやりとりするようになりました。
そんなご夫婦に、旅先でのちょっと恥ずかしいエピソードをご紹介します。
今年の5月、伊豆半島の温泉に出かけました。海に沈んでいく太陽をデジカメのムービーモードで撮影し、旅館の温泉を満喫した後は地場料理、そしてお酒を嗜みました。ここまではどこにでもいる紳士と淑女のシニアカップル。
一転するのはここから。料理が下げられ、布団が敷かれるまでの間、紳士と淑女の仮面を取り去りジジとババに大変身! カメラを卓上に置き、満面の笑顔で「沙紀ちゃ〜ん、ジジだよ〜」「ババもいるでちゅよ〜」。・・・とても他人に見せられたものではありません。
「失礼しま〜す」と女中さんが布団を敷きに入ってきたとき、旦那さんはパソコンに向かい、撮影した動画を娘さんに送信中。奥さんはおしとやかにお茶をすすっているのですから、女中さんにとっては「温泉旅館になれた紳士と淑女」にしか映りません。少しばかり緊張しつつ、テキパキと布団を敷いていきます。
そのとき、「ん?」と旦那さん。奥さんは不可思議な顔でだんなさんを眺めると、その旦那さんの顔が見る見る笑顔に。パソコンの画面を奥さんに向け、一緒に見ていたのですが、それがお孫さんが初めてたってヨチヨチ歩きをしている動画でした。耐え切れず、「沙紀ちゃ〜ん、ちゅごいでちゅね〜」「じょうじゅ、じょうじゅ〜!」。遥か遠方からリアルタイムの大ニュースが届けられ、ご夫婦は興奮状態に!
驚いたのは女中さん。布団を敷いているほんの数分での豹変にぽかんとした顔でご夫婦を眺めてしまうと、「見てくれ、うちの孫が…」。ご夫婦ともハッと我に返り、顔を見合わせて大爆笑。
翌朝旅館を出るとき、昨夜の女中さんから、「お孫さんがいつまでもご健康で」と、地元の神社のお守りをお土産にいただいたそうです。
※このエピソードは、高速モバイルが一般的になる近未来にはこんなことが起こるんだろうな〜、という想像の下に書かれたフィクションです。